ナイトタイムエコノミーという言葉を聞いたことがあるだろうか?
日本は海外と比べてナイトタイムエコノミーの市場規模が小さいとされている。このことはコロナ禍以前から官公庁を中心に改善すべきとの声があった。ナイトタイムエコノミーを促進するには、インバウンド消費だけに頼ることなく、国内マーケットにも目を向けることが重要だ。飲食店やエンターテインメントなどのコンテンツ提供者以外にも、交通や決済などの関連する事業者とも連携し、感染拡大防止にも配慮したUXを模索していく必要がある。
ナイトエコノミーとは何か
ナイトタイムエコノミー(Night-time Economy)とは、夕方から翌朝にかけての時間帯に行われる経済活動である。その時間帯は、レストラン、バー、クラブ、ライブハウス、映画館などのレジャー施設やエンターテイメント施設の中心的な営業時間であり、夜間の観光や文化イベントなども含まれている。ナイトタイムエコノミーは、都市の活性化、雇用創出、観光振興などに貢献し、地域経済にとって重要な役割を果たす。この経済活動は、日中の経済活動とは異なる市場を形成するものである。
しかしながら、ナイトタイムエコノミーが発展すると、都市の安全性、公共交通の利便性向上、ノイズ問題、治安問題といった社会的課題が浮上し、適切な対応策が必要になる。
各都市や地域によって、ナイトタイムエコノミーをどのように発展させるか、そのバランスをどのように取るかは異なりますが、ナイトエコノミーが夜間の都市の魅力を高め、経済的な利益をもたらすことは間違いない。
ナイトタイムエコノミーの海外成功事例
海外でのナイトタイムエコノミーの成功例を紹介しよう。ナイトタイムエコノミーが多様な形で発展し、地域の特性やニーズに応じて成功を収めていることがわかる。
ニューヨークのブロードウェイショー
ニューヨークのブロードウェイでは、世界的に有名なミュージカルや劇が夜遅くまで上演されている。これらのショーは夜間のエンターテイメントの重要な柱であり、世界中から観光客が集まる。ブロードウェイは高品質なエンターテイメントの提供、そしてそれを支える強固な産業基盤によって支えられている。
ロンドンのナイトチューブ
ロンドンでは、金曜日と土曜日の夜間に限り、一部の地下鉄ラインが24時間運行する「ナイトチューブ」が導入されている。夜遅くまで働く人々や夜間のレジャーを楽しむ人々の移動を支援し、ナイトタイムエコノミーの活性化に貢献している例である。こうした公共交通の利便性向上は、夜間の安全性やアクセス性を高めることで、さらなる経済活動の促進を実現する。
バルセロナのナイトライフ
バル、クラブ、ライブミュージックの会場が多く、深夜まで賑わうスペインのバルセロナも、豊かなナイトライフの成功例である。地中海の暖かい気候と、リラックスした文化が夜遅くまでの活動を促していることが成功要因だと言われる。観光客にとって大きな魅力となり、地元経済に大きく貢献している。
シンガポールのナイトサファリ
シンガポールのナイトサファリは、世界で最初の夜間動物園である。夜行性の動物たちを自然に近い環境で観察できるユニークな体験を観光客に提供する。シンガポールの観光産業における主要なアトラクションの一つであり、夜間における観光の新たな可能性を示している。
日本の観光地におけるナイトタイムエコノミー取り組み事例
次に、日本各地で取り組みが進んでいるナイトタイムエコノミーを活用した観光振興を紹介する。夜間の観光やアクティビティの提供は、訪問者にとって魅力的な体験を創出し、地域経済の活性化にも繋げることになる。
京都の夜間特別拝観
京都では、春と秋の観光シーズンに多くの寺院や神社で夜間特別拝観が行われている。ライトアップされた庭園や建物を夜の静けさの中で楽しむことができ、日中とは異なる雰囲気を体験できる。これらのイベントは、京都の夜の観光を豊かにし、訪問者にとって特別な体験を提供している。
参考:春の夜間拝観と桜のライトアップ|そうだ、京都行こう
東京のお台場夜景クルーズ
東京湾では、お台場やレインボーブリッジの夜景を楽しむことができる夜間クルーズが人気だ。夜の海から見る都市の幻想的な光がカップルや観光客から好評を得ており、東京のナイトタイムエコノミーの一環として、夜の観光オプションに組み込まれている。
参考:ナイトクルーズ「2大タワー周遊便」 (東京水辺ライン)|gotokyo.org
札幌の白い恋人パークの夜間営業
札幌の「白い恋人パーク」は、イシヤチョコレートファクトリーのテーマパークだが、特定の期間中、夜間営業を行い、工場のライトアップや夜限定のイベントを提供している。ファミリーや観光客に提供する新たな夜のアトラクションであり、地元のナイトタイムエコノミーの活性化に貢献している。
沖縄のナイトマーケット
沖縄では、夜間に開催されるナイトマーケットが人気を集めている。地元の食材を使った料理や、沖縄の伝統工芸品などを販売するブースが並び、地元住民や観光客で賑わう。沖縄の文化や食を夜に体験できる場として、観光の魅力を高めている。
ナイトタイムエコノミーが注目されている理由
ナイトタイムエコノミーが日本で重要な政策課題となり、多くの自治体やビジネスが夜間経済の活性化に取り組んでいるのには、以下のような理由がある。
経済成長の新たな機会だから
周知の通り、日本は人口減少や経済の長期停滞といった課題に直面しているが、ナイトタイムエコノミーは新たな経済成長の起爆剤として期待されている。
夜間の活動を促進することで、観光、飲食、エンターテイメント業界などに新しいビジネスチャンスが提供され、地域経済の活性化に貢献するという期待だ。
観光振興に有意義だから
日本政府は、訪日外国人観光客の増加を経済成長戦略の一環としてナイトタイムエコノミーを位置づけている。
ナイトタイムエコノミーが発展すれば、夜間の観光コンテンツや体験プログラムが充実し、訪日観光客に魅力的な夜の街が提供されるため、観光客の滞在時間や消費を増やすことに繋がる。
国際競争力を強化できるから
多くの国際都市では、ナイトタイムエコノミーが盛んだ。夜間の文化やエンターテイメントは観光の大きな魅力となっているのだ。
日本でもナイトタイムエコノミーを強化することで、国際的な観光都市としての魅力を高め、グローバルな競争力を強化することを目指している。
生活スタイルの多様化に対応しているから
労働環境の変化や生活スタイルの多様化により、夜間に活動する人々が増えている。
ナイトタイムエコノミーが発展すれば、そうした人々のニーズに応えるサービスや活動が提供される。
地域文化を振興させるから
地域独自の夜間イベントやフェスティバルを通じて、地域文化の振興や地域コミュニティが活性化する。そのことが地域の魅力を高め、住民や観光客の交流の場を提供するだろう。
ナイトタイムエコノミーはどのように経済を活性化させるか
ナイトタイムエコノミーによって夜間にも様々なサービスやエンターテイメントが提供されれば、消費者に新たな消費機会が生まれる。飲食店、エンターテイメント施設、観光アクティビティなど、多岐にわたる業界での消費が促進されることになる。
夜間特有のニーズに応える新たなビジネスモデルも登場するだろう。例えば夜間限定のイベントやアクティビティ、夜間専門の小売りやサービスなどといった新たな成長領域が生まれる可能性がある。
それらは直接的に雇用を創出する。特に、サービス業やエンターテイメント業界では、夜間勤務の需要が増加し、新たな雇用機会が生まれることになる。
また、夜間の商業活動が活発化すれば、地域経済全体の活性化に寄与する。特に観光地や商業地域では、夜間の活動が地域の魅力を高め、訪問者を惹きつける要因になる。
国内外からの観光客に、夜間に楽しめるコンテンツや体験を提供できれば、観光産業は成長する。夜間の観光体験は訪問者の満足度を高め、再訪や口コミによるプロモーション効果も期待できるだろう。
夜間の文化やエンターテイメントが充実することによって国際都市としてのステータスも向上する。外国人観光客がさらに増えるだけでなく、国際会議やイベントの誘致にも繋がり、グローバルな競争力の強化に貢献するはずである。
ナイトタイムエコノミーの促進は、こうした効果によって経済成長の新たな機会になり、持続可能な社会発展に寄与することが期待されている。