お城の「家老」として活躍する。
この働き方は古いのか、新しいのか。

駅から5分の城は、「大阪城を守る最後の砦」だった

尼崎城(お城の「家老」として活躍するという働き方。この働き方は古いのか、新しいのか。)
堂々たる尼崎城の全景

 

――駅から5分というロケーションの城は全国でも類を見ないのではないでしょうか。
尼崎城は明治6年の廃城令まであったお城です。元の天守だった場所は、ここから200メートル離れた現在の明城小学校のあたりです。今のお城があるのは元の西三ノ丸跡です。明治維新を主導したのが薩摩・長州藩でしたので、徳川の親戚が守っていた尼崎城は、国内城郭の中でも徹底的に潰された城とも言われています。
お城は政治・経済や文化の中心に位置しています。そのような要の場所に阪神電気鉄道が架線し、駅を作ったわけです。おそらくですが、尼崎城は、主要な電鉄駅から最も天守が近いお城ではないかと思います。
――ということは、当時のものは何も残っていないのですか。
それが、結構残っているんです。お城は消えましたが、古文書や当時の写真などは、すぐ近所にある歴史博物館や尼信博物館などに収蔵・展示されているので見る事ができます。市民の方はじめ、尼崎城を知る機会は意外と多いんですよね。
――城内だけでなく、お城の周辺でくつろいでいる方も多いですね。そもそもお城にはどんな役割があったのでしょう。
総合的な施設です。戦国時代においては闘う場所であり、江戸時代では政治をする場所でした。尼崎城の場合は、そういう役割に加えて、大阪湾に入ってくる船を監視する役目もありました。12キロ先の大阪城を守る最後の砦でもあったわけです。江戸時代の兵庫県内では、天守のある城は、姫路城と尼崎城だけと言われています。


 

――日本のお城の魅力とは何でしょうか。
尼崎城は再建されて3年目ですが、多くの市民の方にも「お城を見ると尼崎に帰ってきたという気になる」と言っていただけるようになりました。そのような意味では、お城というものは地元の方々の「シビックプライド」というか、心のよりどころのような存在かもしれません。来城者も年々増える中で、市民の方々のお城に対する愛情のようなものを感じています。全国にあるお城にも、きっとそういう存在価値があるのだろうと思います。
――尼崎城にしかない特長はどんなところですか。
城内では、鉄砲体験や剣術体験などができ、VRシアターなどで歴史も学べます。南側には芝生広場、北側には緑豊かな公園や忍者修行をイメージした児童公園があります。様々な世代の方々にコンパクトに楽しんでいただけるところが特長です。シニアの方が広場で読書されたり、若い方々が緑の中で写真を撮ったり。児童公園では子どもたちが遊んでいます。そんなお城はありそうで、なかなかないと思います。
パネル展示と芝生広場

 

――お城や城下町さん同士の横のつながりやネットワークもあるんですか。
全城協(全国城郭管理者協議会)という天守のあるお城を中心にした団体があり、首里城を入れて50城が加盟しています。それ以外にも大阪城・岸和田城とともに「三城連携」というネットワークを組んでいます。大阪城を西側で守る最後の要が尼崎城で、南側の守りの要が岸和田城だった、ということで連携しています。今後、スタンプラリーやエクスカーション(体験型の見学会)、謎解きイベントなどを一緒に行っていく予定です。電鉄会社や自治体なども加わって、面で盛り上げていきます。
――私は熊本地震の支援で現地に行ったのですが、熊本城の惨状を目の当たりにして心が傷みました。
兵庫県内では、尼崎城や姫路城は、コロナ禍でがんばる医療従事者を応援するために青色のライトアップを実施したりしています。お城にはそういった発信力があるんです。日本人にとって単なるシンボル以上の意味合いがあるのかもしれません。
今の混沌とした状況の中で、お城がある町とない町ではやはり違うと感じています。お城自体が心のよりどころとなり、お城から元気な発信をしていけば、市民の方々に自然と元気が伝播していくような気がしているんです。だからスタッフにもお客様に元気MAXで挨拶してお迎えするように言っています。そういうお城の役割を、どこのお城よりも率先してリードしていきたいですね。

 

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