奈良にはやはりウラ若き本気の伝統工芸作家がいた

奈良にはやはりウラ若き本気の伝統工芸作家がいた
奈良漆器作家・八尾さつきさん
奈良漆器作家・八尾さつきさん
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伝統工芸作家というと、なぜか「美味しんぼ」の海原雄山(の顔)が思い出された。和装で強面でこだわりが強く、自説をなかなか曲げようとはしない。あまつさえ、すぐ怒る、という感じ。ところが奈良市にある「なら工藝館」でお会いした奈良漆器作家の八尾さつきさんは、そのイメージを覆すウラ若き華奢な女子であった。人生で初めて逢う漆器の作家が八尾さつきさんで良かった。海原雄山だったら聞きたいこともなかなか聞けなかったと思う。
(インタビュアー:吉川公二

樹液を塗って様々な形を作る面白さ

 

―奈良で仕事をされておられますが、ご出身も奈良ですか。
はい、奈良県の出身です。現在は奈良市で工房作業をしています。
―漆器との出会いを教えてください。
漆を触りだしたのは大学のときです。無形文化財を研究することになって、絵巻物に出てくる平安時代の硯箱を研究し、古文書なども勉強しました。史料を調べて卒業論文を書くだけではなく、レプリカを作ってみたらどうだと言われたのが漆に関わるきっかけになりました。硯箱のレプリカを作ってみようとしたのですが、漆にかぶれてしまったり、いろいろと難しいことがあり、そのときは箱を作るまでには至りませんでした。
―漆に弱い人って、漆製品でもやっぱり駄目だそうですね。
漆の置いてある部屋の空気を吸っただけでかぶれる人もいます。一度大きな「山」を越えると慣れてきますが、体質的なこともありますので、山を越えられずに挫折せざるを得ない人もいます。手足がかぶれて水疱瘡が割れ、座布団がずぶ濡れになることもあります。
―ひぇー……もともと日本の歴史や古いものに関心があったのですか。
嫌いではなかったですが、特に関心があったわけではありません。小さい頃から美術館やお寺に連れて行ってもらっていました。両親がそのようなものが好きで、将来私のためにもなるだろうと考えていたと思います。そういう意味では、私の中で「伝統工芸」はよく知っているものでしたから、比較的抵抗なく取り組めたのだと思います。
―大学を出て、どうなりましたか。
大学院を修了し、その後、漆器が盛んな輪島に行きました。作家になろうと思っていたわけではなく、とにかく面白かったのでもう少し勉強したいと思ったんです。最終的には奈良に戻ると決めていたので、奈良に戻るときに作家になっていればいいなと考えていました。
―何が面白かったんですか。
塗りも装飾もどちらも面白かったです。樹液を塗って様々な形を作るということが不思議ですし、面白い。自分の技術や感性で様々なことが表現できるのも面白いと思いました。本場の輪島などでは生地(木地)を作る、漆を塗る、そして加飾(装飾)が分業制になっています。作家の中には全部自分でされる方もいますが、私は木挽きができませんので、形になった生地を作ってもらいます。生地に布を使う乾漆(かんしつ)の場合は、最初から自分でやっています。

奈良にはやはりウラ若き本気の伝統工芸作家がいた

 

―奈良漆器の特長とは何ですか。
定義は定かではありませんが、奈良で作られた正倉院文様に代表される螺鈿細工の入った漆器のことだと思います。「正倉院展」などでよく見る唐草文様などの装飾を取り入れたものです。大きく言えば、正倉院宝物に代表される系統、透漆や黒漆などに厚貝やメノウを使って文様をかたどったものですね。
―貝を使うものが螺鈿(らでん)ですか。
そうです、螺鈿細工です。貝だけの作品も作りますし、彫り(沈金)と組み合わせたものも作ります。沈金の技法は関西にはあまり伝わっておらず、輪島などで盛んです。そういう意味では、沈金の技術は自分の武器にもなると考えています。
―漆は日本が高湿度だから乾く、と聞いたことがあります。
温度と湿度の調節をしないとうまく乾きません。漆の中の化学的成分が作用するベストな温度と湿度があります。あまり湿度が高過ぎると表面だけが乾いて中が乾きません。
―中が乾いていないというのは、どうして分かるのですか。
何となく、です(笑)。艶の感じや、息を吹きかけたときの曇り具合や色で見分けます。
―陶磁器は「チャイナ」、漆器は「ジャパン」と言われるそうですが。
かつて日本から様々な文物がヨーロッパに輸出された際、南蛮漆器が代表的な商品だったので、それを指して「ジャパン」と言われるようになったのかなと思います。漆器は中国やベトナムにもありますが、蒔絵のものなどは日本の代表的輸出品として特色があったのでしょう。
―沈金の金色は金粉ですか、金箔ですか。
どちらも使いますが、金粉と金箔では光り方が違います。粉は落ち着いた感じになり、箔はもうすこしきらっとします。金箔を入れるときはかなり叩いて入れるんですよ。
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