阪神電車で大阪-神戸間を往復する人は気づいていたと思う。尼崎駅前に唐突に現れる不思議な「お城」の存在に。2019年春に公開された尼崎城とは、いったいどんなお城なのか。「?」マークを飛び出させながら、尼崎城の「家老」を務める大西淳浩さんに会いに出かけた。(インタビュアー:吉川公二)
尼崎城を守る4人の家老たち
――大西さんはこの尼崎城の「家老」なんですよね。
私の仕事は、尼崎城に関する様々な企画・広報などブランディングをすることです。日本の歴史が好きで、日本史に関する分野もひとつの柱にして活動を続けています。それを知った尼崎城の指定管理会社から、私に声をかけていただきました。
尼崎城は、もともとはミドリ電化の創業者、安保(あぼ)詮(あきら)さんが再建して尼崎市に寄贈されたものです。尼崎が創業の地だったことも寄贈された理由でしょう。お城を再建するというのは、大変お金がかかります。篤志家が協力しないとできることではありません。久留米城や、和歌山城、今治城などもそうです。
尼崎城は、もともとはミドリ電化の創業者、安保(あぼ)詮(あきら)さんが再建して尼崎市に寄贈されたものです。尼崎が創業の地だったことも寄贈された理由でしょう。お城を再建するというのは、大変お金がかかります。篤志家が協力しないとできることではありません。久留米城や、和歌山城、今治城などもそうです。
――はあ、なるほど。篤志家がお金を出して再建した城というのは全国にあるのですね。
ただ、建立しても維持しつづけるのがまた大変です。尼崎城の場合は尼崎市が管理し指定管理者が運営をする形になりました。
――大西家老は、やはり子ども時分から日本史好きだったのですか。
そうですね。歴史好きの父親の影響で時代劇もよく見ていましたし、家には歴史に関する本や資料もたくさんありました。ドラマで水戸黄門が北海道に行った回では、父は「これは嘘や!」と力説していました(笑)。かつての大河ドラマは、衣装や時代考証などもよくできていましたよね。私も、「黄金の日日」や「花神」、石坂浩二が上杉謙信を演じた「天と地と」などは、本当にその時代に行ったかのような気持ちで見ていました。
――「花神」は私も見ていました! 中村雅俊がよかったです。
それでオファーされて、日本史好きとしては、ぴったりだったわけですね。
それでオファーされて、日本史好きとしては、ぴったりだったわけですね。
いやー、最初は悩んだんです。歴史好きの身としては、お城はやはり「木造再建」でなければと思っています。だから木造ではなく、エレベーターもある城というのはいかがなものか、と思いました。ただ、現在の尼崎城は文化庁の管轄ではなく、美術館でも博物館でもありませんから制限も受けずに自由に発信ができます。それはちょっと面白いことではないかと思い、お引き受けしたわけです。
――本当の「家老」というのは何をする人ですか。
「家老」というのは、その組織の方向づけや管理の役目を負っていた人です。今でいうと、学校の教頭先生に近いかもしれません。現場をきちんと把握し、間違いがあれば正すという重要な職責を担っていました。「家老」の上は「藩主」で、それ以上の職階はありません。あと、江戸時代から「家老」は一人ではなく、複数人の合議制です。この尼崎城にも実は4名の家老がいるんです。私が企画・広報などブランディングを担当する家老というわけです。
――他の家老たちの担当は?
尼崎城の筆頭家老は、お城の全体管理をしています。また運営を担当する家老が2名います。家老の他には「大目付」や「奉行」など、様々な肩書で働いている人がいます。こういう肩書制度も、知る限りありませんでしたので尼崎城に取り入れました。お客様にも「家老様!」とイジっていただけるので楽しいです。
――大西家老が出演しているテレビを見たことがありますが、具体的にはどんなことをしているのでしょう。
尼崎城の今後を見据えた計画を創っています。お城の演出もしますし、WEB・SNSの発信をしたり、取材を受けたり、各メディアと広報的な調整もしています。グッズの開発などもしていますね。
――どんなグッズがあるのですか。
一番象徴的なものとしては、江戸時代に描かれた尼崎城の「絵図面」をそのままマスキングテープにした商品です。60センチでお城を一周するようにデザインしてあります。お城の内側から描かれている図面というのは本来なら門外不出のものですから、かなり貴重なんです。
また、森永製菓さんとオリジナルの「ハイチュウ」を作りました。その名も「シロチュウ」(笑)。「ハイチュウ」はもともと尼崎の塚口工場で誕生したもので、そのご縁でコラボさせていただいたんです。すぐに売り切れましたので、現在、第2弾を企画中です。
また、森永製菓さんとオリジナルの「ハイチュウ」を作りました。その名も「シロチュウ」(笑)。「ハイチュウ」はもともと尼崎の塚口工場で誕生したもので、そのご縁でコラボさせていただいたんです。すぐに売り切れましたので、現在、第2弾を企画中です。
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NEXT 駅から5分の城は、「大阪城を守る最後の砦」だった
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