完全オーダーメイドで2年待ちの万年筆に、世界から注文が殺到している理由

完全オーダーメイドで2年待ちの万年筆に、世界から注文が殺到している理由

父は商売をやめようかと思ったらしい

元々は、私の祖父が、万年筆の製造商を営んでいた兄の町工場で修業した後に、地元の鳥取で万年筆の商売を始めたのが昭和9年でした。当時は手作りで完全に家内制手工業です。戦後に大手メーカーの万年筆が主流になり、そのときはメーカーのものを売っていたのですが、それもボールペンやシャープペンがとって代わり、万年筆はだんだん売れなくなっていった。さらに1970年代後半になると、人が字を書かないワープロ、パソコンの時代になり、筆記具そのものまで売れなくなりました。『万年筆博士』という屋号ですが、万年筆がほとんど売れないので、思いきって商売をやめようかと父は思ったそうですが、その前に、もう一度、手作りでやってみたらどうかとチャレンジしたそうです。
せっかく手間や時間をかけて手作りで作るのだから、完全オーダーシステムにして、お客様一人ひとりの手にフィットしたものを作るということを始め、そのためにカルテも作ることにしました。そうしたら、変わったことをやっていると多くのメディアに取り上げられました。テレビや雑誌、新聞などでも紹介してもらえて、口コミで広がって、だんだん注文が増えていき、今のように長い期間お待たせするような状態にまでなったんです。今は、海外からの注文も多くて、1年の半分は海外向けの仕事です。
― 町工場から始めてこだわって作り続けた山本さんの万年筆が、海外でも高く評価されているのですね。山本さんご自身も行かれるのですか?

ある熱心なお客様が、毎年オランダから来ていただいているのですが、アムステルダムに来ればヨーロッパ中から人が集まりますよ、と熱心に勧めていただいたので、一度行かないと失礼だと思って、2016年5月に、ヨーロッパでイベントを開いたんです。そうしたら10か国以上からお客様がいらっしゃって。北米やカナダ、台湾、ヨーロッパの中ではイギリスの方が多かったですね。本当にいろいろな方がいらっしゃって、とてもうれしかったです。
― 本当に全世界ですね!
 
そういったファンは、珍しい万年筆を手に入れると写真を撮って、InstagramやFacebookなどで『書きやすいよ!』などと自慢大会をするそうです。それを見て、珍しさに惹かれて注文されるお客様も多く、ますます自然に口コミが広がっていくようです。
 
― では、最後に、この記事の読者にメッセージをお願いします。
私は「お手紙」より、「お便り」という言葉が好きでよく使うんです。「頼」と「便」は同じ語源だったらしくて、それがあれば何とかやっていける、という存在が『おたより』なんですね。もらった相手を元気づける手紙も、そのような存在だと言えないでしょうか。ですから、ビジネスパーソンの方々は、とてもお忙しいと思いますが、例えば部下に大事な一言を伝えたり、お客様に大事な一言を伝えたりするときには、たまにはぜひ肉筆で、思いを込めたお便りを書いてみてはいかがでしょうか。
――そういう気持ちのこもったお便りをもらったら、絶対にうれしいですよね。


 

 

インタビューを終えて

私の場合、お礼を伝えたい人ばかりに囲まれて生きていますから、お便りを書こうと思ったら書ききれなくなってしまうかもしれません。でも、たとえ2年待っても、自分の手にフィットする万年筆がぜひ欲しいと思った榎並でした。

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